8/15/2007

LongDistance

「夕焼けよりも朝焼けが好き。でもあなたの酒焼けの顔も声も悪くない。くだらない駄洒落だけれど、
夜更かしした後の朝ってそういうくだらないことが愛おしく思えたりするわけ。」
「わかるようで、まったく意味がわからないよ。」

■8/9
 出発の日。成田発サンフランシスコ経由でソルトレイクへ。飛行機で「スパイダーマン3」と「バッテリ ー」を観た。小説を一冊。ワイン小瓶を3本。通路側も窓側も取れずど真ん中の席でかつ足元に変な 金属のボックスが設置されている最悪の席だった。たとえ両隣が美人だったとしても10時間近いフラ イトはたえられないと思った。当然両脇は美人ではなく、右が迫力のあるいびきをかく中年女性で左が寝つきの悪い子供で、最悪の上塗りだったけれども。到着後同僚とステーキハウスへ行ってステーキとワイン。なんてうまいワインだと思っておかまいなしにがぶ飲みしていたらどんでもない高級ワインで、清算時に全員が一発で沈黙し、時が止まり、財布が空になった。一番最初の食事なのに。

■8/10 

 USA_Day2。終日仕事。朝、スターバックス。昼、タイカレーとトムヤンクンのランチ。夜、郊外にある韓国料理屋でチゲ鍋。口直しにホテルのバーでウィスキー。終日気を張っていたのと前日のフライトの疲れと時差ボケで少し寝つきが悪かった。上司と相部屋だったので気が抜けなかったのかもしれない。ヘッドフォンしたまま就寝。夜中にコードが首に絡まって目が覚めた。
*Anthony David/3 Chords & The Truth

■8/11
 USA_Day3。 終日仕事。朝、スターバックス。昼、フィッシュタコス。夜、会社のお偉いさんが著名な 方の別荘に招かれたので運転手兼残飯処理として同伴。一生に一度あるかないかの機会だと思っ たけれど、気を使うし酒は飲めないしで正直気が進まなかった。とはいえ謂わば接待、仕事の延長だったので行く行かないの選択権があるわけもなく黙って運転。緊張と、人柱として出された食事を限界以上に食べ続けたこともあり、終始変な汗をかいていた。金だけでなく、偉業を達成し地位も名 誉も手に入れた人間だからこそこんなところに別荘をたて客人を招きおおらかにかつ何事にも挑戦的に生きていられる。仮に収入が膨れ上がったとしてもサラリーマンだけやっていたら絶対に無理だなと、屋上のテラスからソルトレイクの地平に落ちる夕日を眺めながらぼんやり思った。晩、運転のご褒美ということで上司にホテルのバーでウィスキーをご馳走してもらった。
 あっというまのソルトレイク。インプットした情報量が多すぎてパンクして何もかも忘れてしまいそうだと夜更けに目が覚めて思った。全て垂れ流しで何も身になってないんじゃないかと不安になったりもした。そんなことをいって真面目なふりをしやがってと茶化す自分。不安になったり焦ったり励ましたり茶化したり。ベッドの中で独りでぐらぐらしていた。多分、間違いなく、十中八九、ウィスキーの飲みぎだったと思う。

■8/12
 USA_Day4。早朝日も出ないうちにソルトレイクからデンバーへ。アメリカはどこもかしこも禁煙で困る。終日仕事。昼、カフェでピザ。アメリカはどこもかしこもコーヒーがまずくて困る。夜、ボルダーのダウンタウンへ移動し中華料理。移動が多くのんびりした一日だった。アメリカでの運転は全て自分が引 き受けたのだけれど、地平に向かって真っ直ぐ走る感覚がたまならい。アメリカはこれだけで充分だと思う。いつか何年か前に結婚前の嫁さんとアメリカを縦横断したときのことを思い出した。あまずっぺ。


■8/13
 USA_Day5。朝、トレッキング。Chautauquaトレイルを歩き、Flatironsの頂上手前(だと思う)まで行った。陽が照ってからだと暑くてとても歩けないと思うコースだったけれど、気軽に歩くには最高にいいトレイルだった。ランニングする人、歩く人、ロッククライミングする人、岩場でヨガを楽しむ人。日本でも、もう少し気軽にこういうアクティビティが楽しめればいいのにと素直に思った。誰もかれも何をするにしても肩肘を張りすぎているんじゃないか。特に俺。
 午後、仕事。昼飯抜き。夜、最後の晩餐はアメリカンジャパニーズレストラン。SUSHIとTOFUとSAKE。GEISYAがいればこのうえないですねと言おうと思ったけれど、同行した女性スタッフに気をつかってやめた。たかだか4日5日の海外出張でそのへんの下らないジョークが通じるようになると思ったら大間違いだと、別の同僚からの忠告。たしかにそうだ。そうなのか。

■8/14-15
 USA_Day6。早朝、東京へ帰るためデンバー空港へ。遥か遠くの地平線から陽の頭が出ていて、空がなんともいえない色に染まっていた。この景色が見れればそれだけでいいと今回のアメリカ出張で何度も思った。それでも帰る。昔アメリカに住んでいた頃はどうでもよかったというか気にもしなかったけれど、自分はどちらかといえばアメリカのおおらかで退屈だと感じるくらい静かで広大な空気よりも、日本の、特に東京の喧騒、雑然として混沌とした感じに埋もれるのが好きなんだと思う。だからいつも信じられないくらい美しい朝焼けを見て感動しこれがここでしか見れないとわかっていても、帰るのだと思う。多分二度とこれないことになっても、まあまた来ればいいと言って日本に帰ると思う。どちらかといえばの話だけれど。
 デンバー発、サンフランシスコ経由、成田着。帰りはトラブル続きでどうなることかと思ったけれど、無事帰国。小説を1冊。ワイン小瓶を3本。またも両隣は美人ではなかったけれど、通路側でかつ隣が空席だったので足を伸ばして座ることができた。機内食を忘れるくらいよく寝た。

■明日から
 帰宅。嫁は実家に帰っているので土産話はお預け。ベランダから横浜か川崎のどこかで上げている花火が見える。金も地位も名誉もないけれど、この景色だって悪くない。明日からは福岡。博多の町も暑いのかな。